仕事用に使っていたThinkPad X1 Extreme初代の動作が重くなってきたので、より軽量な14インチモバイルノートのT14 Gen3(Intel)に乗り換えた。
グレード的には2段階ほど下がったものの、第12世代のIntel Core i7-1260Pは今までのモバイルノートでは考えられないほど速いし、アスペクト比16:10のWQUXGA(3840*2400)液晶はとても使いやすい。
今回は極上の構成で調達したThinkPad T14 Gen3の紹介と併せて、ThinkPadの魅力を伝えていきたいと思う。
ThinkPadについて
ThinkPadは1992年に日本IBMの大和研究所で生まれた。IBMのパソコン事業がレノボに売却されて15年以上経った今もなお、設計・開発の拠点は日本にある。
AMDが2回戦況をひっくり返し、Macintoshが3回CPUのアーキテクチャを変更し、10個以上のWindowsのバージョンがリリースされるほど月日が経った今日でもThinkPadは変わらない価値を提供し続けている。
筆者はThinkPadの大ファンで、これまで5台のThinkPadを購入して愛用してきた。IBM時代のマシンも中古で触ったことがあるが、新品購入でがっつり使ったのはすべてLenovo時代のもの。
ThinkPadの魅力
TrackPointとキーボード
ThinkPadの魅力はいくつかあるが、中でも「一度使うとやめられない」のがTrackPointだ。
つや消しブラックの本体にアクセントとしてキーボードの中央に配置された赤色のポッチ、これは実は乳首ではない。
指で押すとマウスカーソルが動くポインティングデバイスで、キーボードから手を離すことなくマウス操作を行うことができる。ゲーム機のコントローラーのスティックのように倒して操作するのではなく、動かしたい方向に力を加えるイメージだ。New 3DSのCスティックに近い。
最廉価のEシリーズから、新しい価値観を提案するZシリーズにまで搭載されているTrackPointは紛れもなくThinkPadのアイコン的存在だ。これがついてない、あるいは操作感が違うものはたとえThinkPadと名乗っていようがThinkPadに非ずと言われるほど。ちなみに、DelllやHPの法人向けのノートパソコンの一部にも近い形のデバイスが搭載されている。
そして、ThinkPadは近年のノートパソコンの中では最高峰と呼べるほど上質なキーボードを備えており、TrackPointと併せてプログラマーなどの特にキーボード操作が重視される仕事に従事しているユーザー*1からの支持が厚い。ThinkPadのキーボードの評判の良さは絶大で、ThinkPadからキーボード部分を取り出してUSB接続にしただけのトラックポイントキーボードなる商品もあるほど。
修飾キーなしでPgUp/PgDn/Home/Endあたりが使えるのもありがたい。また、日本で販売されているThinkPadでも英語配列キーボードを選ぶことができる。
高い堅牢性と品質
満員電車でぎゅうぎゅうに押し込められても破損しない程度の耐久性があるThinkPadは、拷問とも称されるほどの耐久テストを経て製品化される。これはレノボのIdeaPadシリーズよりも高い水準が設けられている。
近年ではThinkPadの品質に疑問を持ち始める人も少なくないが、それでもなお選ばれ続けるだけの十分な品質がある。
レッツノートには遠く及ばないが、ショップBTOのノートパソコンに比べればずっと丈夫だろう。
幅広いカスタマイズ項目
ThinkPadは完成品を店頭で購入することもできるが、カスタマイズして注文することでより理想に近い構成のマシンを手に入れられる。
カスタマイズ項目は多岐に渡り、CPUやメモリ、OSのグレードはもちろんのこと、機種によってはディスプレイの解像度やタッチパネルの有無、バッテリー容量などを選ぶことができる。少し特殊な項目だと、NFCやスマートカードリーダーなどがある。また、上位のモバイルノートならSIMカードを挿して使う5G対応の通信モジュールの搭載が可能だ。
「Core i5だけどメモリは64GBにしたい」といったワガママにも応えられるほど、自由自在に構成を練ることができる。
今でこそディスプレイはフルHD以上が当たり前になったが、つい数年前までは高解像度のディスプレイを選べる機種はそう多くなかった。ThinkPadの上位シリーズではWQXGAやWQUXGAのディスプレイを選ぶことができる。
拡張性/保守性の高さ
ThinkPadを指名買いするユーザーが多い理由に、購入後にパーツを交換しやすい点が挙げられる。
他のメーカーのノートパソコンにも、メモリやSSDを交換可能なモデルは普通に存在するが、分解が難しかったり、問答無用でメーカー保証が失効するものも少なくない。
そんな中、ThinkPadはユーザーによるパーツの交換をある程度許しているし、交換実施の手順を記した「ハードウェア保守マニュアル」を公開している。それどころか、修理に必要なパーツをユーザーが注文することも可能だ。
また、初期装備で必要の無い端子類もきちんと実装されているため、カスタマイズで追加しなかったWWANカードやスマートカードリーダーを後から追加するといったことも一応可能である。
充実のサポート
追加保証のメニューが豊富で、個人ユーザーでも法人向けと遜色ない手厚いサポートを受けられる。
レノボの本社は中国にあるが、日本国内のサポート業務はNECの息がかかっているだけに品質が高く、修理対応に関しても国内に拠点があるため不安が少ない。
ThinkPadのバリエーション
用途やコンセプトに合わせていくつかのカテゴリーが用意されている。それぞれ重量や選べるCPU、選べるディスプレイが違うが、ThinkPadとしての基本理念は変わらない。
- X1シリーズ 先進的なフラッグシップモバイル
- Zシリーズ 持続可能性や先進性をテーマにした、新しい価値観を持つユーザー向けプレミアムモバイル
- Xシリーズ 実用重視の高機動性ハイエンドモバイル
- Pシリーズ 3DCGやCADの利用を前提としたモバイルワークステーション
- Tシリーズ 大容量RAMを搭載可能なハイパフォーマンスモバイル
- Lシリーズ オフィスに最適なスタンダードノート
- Eシリーズ 幅広く使えるエントリーノート
TシリーズはフラッグシップのX1や最廉価のEと比べるとややマニアックな存在。
ThinkPad遍歴
- ThinkPad 8 (2014)
- BayTrail-T Atom搭載の8インチタブレット。
- 最初期のものでRAM2GBだったが、当時の32bit版Win8.1の動作はとても軽快で、Visual Studioや軽いゲームなんかも動かすことができた。
- ThinkPad E450 (2015)
- ThinkPad X1 Yoga 2nd Gen (2017)
- ThinkPad X1 Extreme 初代 (2018)
- 急遽dGPU搭載で速いマシンが必要になり、第2世代が出たあとだが初代をタクサンダイレクトで購入。今でもたまに使う
- バッテリー駆動時の速度や応答性ははっきり言って微妙だが、色々と細工して使うとそれなりに速い。広色域の4Kディスプレイはマルチタッチと何故かペンにも対応した。
- ThinkPad T14 Gen3 (2022)
- 今回購入したもの。主に仕事用。
番外編
ThinkPad T14 Gen3について
前置きが長くなったが、今回購入したThinkPad T14 Gen3について見ていこう。
前述の通り、TシリーズはThinkPadの中でも高性能に位置づけられるラインで、ハイエンドのX1 Carbonよりも重量がある代わりに処理速度や拡張性の面で優れている。Eシリーズほどではないが、性能の割に値段も少しだけ安い。
本体質量は約1.21kg~と記載があるが、構成によって変動する。今回注文したものはキッチンスケールで測ったら1.4kgほどだった。
ちなみに、本機の軽量薄型版*2に位置づけられるT14sは、メモリがオンボードのLPDDR5となる点や、2.8Kの広色域有機ELディスプレイが搭載できる点などが異なる。5G対応のWWANカードも搭載できる*3など、より携帯性に特化したモデルとなっている。
ほかにも、設計や部品の多くを共有する姉妹機としてP14sがあり、こちらはディスクリートGPUとしてQuadro T550を搭載可能な軽量モバイルワークステーションとなっている。
構成と価格
今回注文した構成をざっくりと要約すると、i7-1260P/16GB/256GB/WQUXGA液晶で195,195円の構成だ。
ちなみに、レノボの通販は時期によってセール価格が適用されるので、メルマガを登録して最も安いタイミングで買うのがおすすめ。そのほか、ポイントサイト「楽天リーベイツ」での高額ポイント還元も不定期で行われているから、購入時には併せてチェックしたい。筆者は20%ポイント還元付きで購入した。
ここではカスタマイズ項目を検討する際に注意すべきポイントを紹介する。
CPU
CPUはCore i5とi7があり、それぞれ2種類のバリエーションがある。i7-1260Pのように末尾が"P"のものと、i7-1225Uのように末尾が"U"のものがある。Intel的にはPは薄型軽量パフォーマンス、Uはより薄型軽量といった具合。ちなみに大型のモバイルワークステーションやゲーミングノートにはよりハイパフォーマンスでエンスー向けのHが採用される。
i7-1260Pとi7-1225Uを比較すると、末尾Pの方がPコアが2つ多く、消費電力も多めになっている。他にもキャッシュ容量やiGPUの最大クロックなどの違いがあるようだ。
レノボのカスタマイズではPとUの価格差は5千円ほどで、少し悩みつつもi7-1260Pを選択した。省電力性能にも差があるので、「バッテリー駆動で3時間以上作業するならU」といった具合に使用方法に当てはめて検討すると良いだろう。
パッケージによってはvPro対応の大変高価なCPUが選択できるかもしれないが、性能差はごく僅かなのでリモート管理を必要としない普通の個人ユーザーはvPro非対応のもので問題ない。
ちなみに、Ryzenを搭載可能なThinkPad T14 Gen3(AMD)が別の製品として存在するが、メモリがオンボードのLPDDR5となる点や、dGPUが選べないなどIntel版と仕様が異なる。
メモリ
本機はオンボード最大16GB+DIMM最大32GBで合計48GBのメモリが搭載可能だ。レノボのカスタマイズではメモリは非常に高価なため、DIMMのメモリは非搭載とし、後で自分で買ったメモリを増設することにした。
ちなみに、メモリは同容量・同周波数のものを組み合わせるとデュアルチャネルと呼ばれるモードになり、交互に動作することで帯域幅を拡張できる。
デュアルチャネルは日常的な使用で体感速度の差はほとんど感じられないとされるが、CPU内蔵GPUの速度はメインメモリの帯域幅に大きく依存する。そのため、ゲームなどの3D描画のフレームレートが数段向上することもあるようだ。
ストレージ
SSDのカスタマイズは非常に高価なため、最も安い256GBを選ぶ。MacBook Proのストレージよりも高いので市販品を買って自分で交換するしかない。
ディスプレイ
ディスプレイのバリエーションがとても多い。それぞれ解像度とタッチパネルの有無、輝度や色域が異なる。
常識的な文字サイズかつ省電力を重視するなら2.2K液晶か400nitのWUXGA液晶が良さそうだ。300nitのWUXGA液晶はNTSCカバー率が45%ととても低いので、発色やコントラスト比は全く期待できない。
一番高いWUXGA液晶は、プライバシーフィルムのように左右からの覗き込みを防止する「Think Privacy Guard」を備えている。キー操作でオンオフができるので、公共の空間で仕事をする機会の多いユーザーにおすすめだ。
X1 Yogaを使っていた時には14インチWQHDを拡大率100%で常用していたし、X1 Extremeでは15インチ4Kを100%で常用していたくらいには高解像度狂なので、当然最上位のWQUXGAを選んだ。
GPU
GeForce MX550という聞き馴染みのないディスクリートGPUを選択できる。ベンチマークスコアはノート用のGTX 1050と同等程度らしいが、VRAMが2GBと少し心許ない。重たいゲームの動作はもちろん、CUDAを使った科学計算や機械学習にも不向きだ。
筆者はモバイルノートのdGPU搭載に懐疑的だ。メリットよりデメリットの方が多く、値段もあまり安くないからだ。
メリット
- iGPUと比較してそれなりに高い性能を得られる
- GeForceならCUDAが使える
- メインメモリとは別でVRAMを持っている
- 描画性能がメインメモリの帯域幅に依存しにくい
- メインメモリの消費を若干減らせる
デメリット
- ゲーミングノートやデスクトップマシンのGPUと比べると性能が圧倒的に低い
- 消費電力が増える
- MUX-lessなので、レンダリング結果をiGPUに転送するオーバーヘッドがある
- 冷却性能が足りない
- GPUに負荷をかけると、その分CPUが出せるパワーが制限される。
- T14ではdGPU搭載機であってもシングルファンで、冷却性能に余裕が無い。
というわけで今回は搭載を見送った。高性能なGPUが必要なら、ThunderBoltで外付けGPUを接続するという手もあるだろう。
WWAN
現在国内のストアにあるT14 Gen3では選択ができなかったが、ハードウェア仕様上は4G/5G対応の通信モジュールが搭載できるようだ。
価格はT14sの場合で4Gが18,700円、5Gが44,000円ととても高価だ。当然、別途通信事業者との契約も必要なので、よほど頻繁に外で使う用事がなければ必要の無い装備だろう。
以前、モダンスタンバイじゃない時代のX1 Yogaに搭載して使ったことがあったが、スマホでWi-Fiテザリングして接続するのに比べてスリープ復帰時のネット接続までの時間が長かった。また、タイに渡航したときに現地のプリペイドSIMを挿した時にSIMスロットを破壊してしまうなど、耐久性にも難があった。最新の機種では改善されているのだろうか。
もし付けるならpovoのSIMを挿して運用するのが良さそう。通信機能や機動性を重視するのであれば、Snapdragon搭載のThinkPad X13sも気になるところ。
保証
標準で1年間の保証があるが、年数の延長や保証内容の拡張といったオプションが選べる。カスタマイズ画面で「おすすめを表示」がオンになっていると一番高い保証サービスしか表示されないので注意。
落下や水没などの事故による破損を期間中なら無料で対応してくれるアクシデントダメージプロテクションというサービスもある。
延長保証は購入から1年以内、アクシデントダメージプロテクションは90日以内であれば追加購入が可能だが、必要なら最初の時点で選択するほうが楽だ。
その他
数千円でできる地味なカスタマイズを見ていく。
内蔵カメラ
パッケージによってはHD/FullHD/FullHD+IRの3種類のWebカメラが選択できる。上位のものにしたからといってZoomなどビデオ会議の画質が抜群に良くなるといったことは無いだろうが、FullHD+IRのカメラではWindows Helloによる顔認証が使える。
Windows Helloの顔認証はマスク着用時こそ使えないものの、指紋認証と比べても反応が早く使い勝手がとても良いので選ばない手はない。
指紋認証
電源ボタンに統合される形で搭載される指紋認証機能。顔認証と合わせて搭載したい機能の一つ。千円で付けれる。
NFC
たった2千円だが、使う機会がないので非搭載とした。絶対いらないけどつければよかった。
スマートカードリーダー
本体右側面に接触型のICカードの差込口が付く。身近にあるカードで言うとマイナンバーカードやB-CASカードが読める。
これも絶対いらないけど、非搭載の場合はメクラで塞がれる形になるのでつけときゃよかった。
イーサネットアダプター
Type-CをLANにするアダプタ。本機はアダプタなしでLANケーブルを挿せるジャックが付いているので、2本以上繋がなければいけない状況でもなければ必要ない。
値段が4400円と市販品に比べて高いが、何か特殊な機能*4でも持っているのだろうか。
ビデオ変換アダプター
HDMIからVGA、Type-CからVGAといったVGAに変換する外付けのアダプタをついでに購入できる。
プロジェクターにつながっている卓や埋設されたケーブルなどの設備が古いせいで未だにVGAが必要なシーンは珍しくないが、ネット通販で同等品が数百円から買えることを考えるといらない。
キーボード
日本語配列と英語配列、バックライトの有無を選べる。暗がりで操作しやすいことと、単純にかっこいいからという理由でバックライト搭載の日本語配列とした。
バッテリー
39.3Whと52.5Whから選択できる。差額は1100円で少ない方を選ぶ理由が無いので後者にした。
末尾PのCPUとの組み合わせなので本当は80Whくらいほしい。
電源アダプター
45Wと65WのACアダプタが選べる。
CPUやディスプレイの消費電力が大きいため、45WのACアダプタでは使用中の充電がとても遅いか、まかないきれずにバッテリーが減ってしまうと思ったので65Wとした。
USB PD準拠である程度の電力を供給できるものなら非純正の充電器も使える。小型のもの、マルチポートのものが数千円から買えるので、使い勝手をより良くするために検討したいところ。
実物を触る
9/6に注文し、10/1に届いた。およそ3週間かかった。
パーツの交換
届いて間もないが、SSDの交換とメモリの増設を行った。分解の際はBIOS Setupで内蔵バッテリーを無効化してから行う。
一際目立つのが大きなファンとヒートシンク。ヒートパイプの途中にはdGPU搭載機であればGPUと周辺部品が実装されるであろう空きランドがある。
WWANカード用M.2スロットやカードリーダー用コネクタ等は非搭載の構成でも実装されている。WWANカードの後付については、カードの他にアンテナとSIMカードスロットも必要になることからなかなか一筋縄では行かなそうだ。
SSDはキオクシアの2TBのものを選んだ。SLC領域を使い切ったあとの速度低下の幅が小さいこと、書き込みに対する耐久性を示すTBWが高いこと、そして旧東芝メモリというブランド価値の高さなど、価格性能比が抜群に良い「今一番アツいSSD」だ。
T14 Gen3はPCIe Gen4 x4のSSDに対応するが、Gen3でも十分な速度があることからGen3のSSDを選択した。
ちなみに、このSSDには環境構築の手間を省くため、X1 Extremeで使っていたSSDからOSや全てのデータをコピーしてある。
メモリはCrucialの16GBを選択。32GBのモジュールまで対応するが、オンボードと同容量とすることでデュアルチャネル動作にしたかったので16GBとした。
Crucialは半導体メモリ大手マイクロンのコンシューマー向け製品ブランドだ。堅実志向でありながらリーズナブルな価格で流通していることから人気が高い。今日では相性問題という単語をめっきり聞かなくなったが、信頼性の高い製品を選ぶに越したことはない。
各項目をチェック
筐体
ThinkPad伝統のピーチスキン加工が施されている。しっとりとした肌触りのつや消しブラックが心地よい。筐体にはマグネシウムが使われているらしい。
百均のチルトスタンドを貼ってみた。底面は広範囲に吸気口が設けられている。
ベンチマーク(CINEBENCH R15)
ノーマルに近い状態と、電圧下げなどのチューニングを行った状態で実施。
ほぼストックの状態
電源プランをいじってあるのでシングルスレッド性能は通常より少し出ているが、マルチスレッドはノーマルと変わらないはず。
ベンチマーク時に急激にファン回転数が上がってうるさいといったこともなく、通常の負荷と変わらない程度の速度で回っていたようだ。
- OpenGL: 98.68fps
- CPU: 1508cb
- CPU (Single): 206cb
電圧/PLチューニング済み
PowerMonkeyにてPLや電圧に手を加えた状態でのスコア。
PLが無制限なので、温度が許す限り際限なくターボクロックを維持し続ける。といっても、CINEBENCH R15は現代のマシンの性能ではすぐ終わってしまうので大きな影響はないかもしれない。ハングアップしない程度には下げたが、電圧下げによる効果がどの程度あるのかはちょっとわからない。
- OpenGL: 104.57fps
- CPU: 1599cb
- CPU (Single): 221cb
電圧/PL/ファンチューニング
PowerMonkeyにてPLや電圧に手を加え、TPFanControlでファン回転数を上げた状態でのスコア。
- OpenGL: 98.44fps
- CPU: 1701cb
- CPU (Single): 237cb
モバイルノートでこの領域まで食い込めるのは純粋に驚いた。
ディスプレイ
輝度
最大輝度は屋内では少し眩しく感じるほどに明るく、最低輝度は真っ暗な場所でも目が辛くならないほどに暗い。
解像度・文字サイズ
WQUXGA(3840*2400)液晶は4Kよりも若干縦に長く、広大な作業領域がある。流石に拡大率100%での常用は難しいので125%で使用することにした。
各拡大率における仮想解像度は次の通り。ppiは文字サイズの目安として仮想解像度から算出。
- 100% → 3840*2400 323ppi (ネイティブ)
- 125% → 3072*1920 259ppi
- 150% → 2560*1600 216ppi
- 175% → 2195*1372 185ppi
- 200% → 1920*1200 162ppi
- 225% → 1707*1067 144ppi
- 250% → 1536*960 129ppi
- 300% → 1280*800 108ppi (デフォルト)
いずれもデスクトップPCで一般的な23インチフルHDの96ppiや、15.6インチ1366x768の100ppiよりは文字が小さくなる。300%では高解像度の恩恵こそ薄いが、モバイルノートとして十分実用的な作業領域を確保できるだろう。
画質・表面の処理
X1 Extremeの4K液晶ほどビビッドには映らないが、それでも十分な画質がある。
表面の加工はハーフグレアといった具合で、照明の映り込みは十分防げるので疲れにくい。ギラつきなどの画質の低下も見られず、ぱっと見はMacBook ProやiPadなどのディスプレイと遜色ない。
DTPや写真などに必要な性能については専門外なので詳細はわからないが、ICCプロファイルが付属する。
タッチ操作
タブレット端末のように硬いガラスで覆われてるわけではないので、少し強く押すと画面が変色してしまう。傷が付いてしまいそうで少し心配だ。
スピーカー
ディスプレイとキーボードの間にステレオスピーカーが配置されている。正面にあることで声はとても聞き取りやすい。
ただ、音質や音量は並以下。ドルビーオーディオでごまかしても音楽再生には耐えない。左右のスピーカーがとても近いためステレオ分離も悪い。音量は騒がしい場所で複数人で使うには最大音量でも足りないくらい。
これはひょっとしたらソフトウェア起因でWindowsをちゃんとまっさらな状態にすれば直るのかもしれないが、iTunesで音楽再生中に頻繁に音がプチっとごく一瞬だけ途切れることがあり、少し困っている。LatencyMonで調べるとそのタイミングでACPI.sysが十数msの遅延を発生させていることがわかった。
マイク
何度か通話で使用したが、聞き取りにくいという意見はなかった。標準の設定ではスピーカーから出た相手の音声をマイクで再度拾ってしまうといったこともなかった。
カメラ
1080p/30fpsで固定焦点のごく普通のWebカメラ。ディスプレイの明かりしか無いような暗い場所でもしっかりと顔が判別でき、フレームレートが著しく低下することもないので十分な性能があると言える。画角はやや広い。
ThinkShutterと呼ばれるWebカメラのレンズを物理的に閉じるスライドスイッチが画面上部に付いているが、これを閉じた状態ではWindows Helloの顔認証は使えない。
キーボード
キー配列におかしな点は無いが、日本語配列の場合は右側の記号類の幅が狭くなっている。14インチと言っても12.5インチのX270と幅が13mmほどしか変わらないのだから、仕方のないところではある。
タイプ時の剛性感は十分だが、X1 Extremeと比べると箱鳴りがあり、わざとらしくうるさく操作するとうるさい。キートップの表面のカーブは浅く、キーストロークも浅い。薄型と言うほど薄型ではないので、もう少し良いキーボードを採用してほしかった。
トラックポイント/トラックパッド
トラックポイントの反応は良好で、WQUXGAのディスプレイでも快適に操作ができる。ELAN製らしい。
代わり映えしないThinkPadのトラックポイント、実はちょっとした改善がある。
これまでのトラックポイントの中ボタンスクロールというのは「カチカチ動く古典的なマウスホイールのエミュレーション」で、力加減の調節が難しかった。近年のトラックポイントでは「スムーススクロール」に対応し、トラックパッドでの2本指スクロールに近い、より直感的な操作感を実現している。
クリックボタンは「支点があるタイプ」ではなく「全体が押し下がるタイプ」。ボタンのどの部分を押しても変わらない力で押せるのでとても使い心地が良い。
ThinkPadのトラックパッドは正直あまり使用する機会がないのだが、少しずつ良くはなっている印象だ。ただし、Macに比べるとまだまだ質感や操作性が劣っているし、カーソルの動きにレイテンシーがあって快適とは言えない。また、発生するタイミングはよくわからないものの、たまに操作に必要な指の本数が1本増える(カーソル操作: 2本指 スクロール: 3本指)不具合が起きる。
充電とバッテリー
充電はType-Cから行う。付属のACアダプタは45Wと65Wから選べるが、USB PDの市販品のACアダプタを使うことも可能だ。GaN半導体採用のものなら付属品の半分程度の体積で同等の性能のものがあるし、複数の機器を同時に充電できる付加価値のある製品も選べる。
筆者が普段使っている充電器は次の通り。
左から
- 純正65W
- hyppr 100W (販売終了)
- RAVPower 61W
100WのACアダプタにワットチェッカーを挟んで計測したところ、高負荷時の消費電力は91Wほどになった。変換のロスを加味しても80W程度までの給電ができているだろう。
急速充電には50Wほどを消費し、CPU高負荷時には充電速度を下げてCPUに電力を割く。そのため、100WのACアダプタでも過剰ということはない。
ちなみに充電はダイソーの20Wのアダプタとケーブルの組み合わせでも可能だった。ただし、最低輝度かつ低負荷時でもほとんど充電が進まないので、スリープ時しか使えないと思って良いだろう。
電池持ちはdGPU搭載で末尾HのX1 Extremeよりは良いのだが、それでも実使用で頑張って3時間といったところ。CPUを末尾Uにして液晶を省電力なものにした場合にはどれくらい持つのだろうか。
熱と騒音
極力ファンの回転数を上げずに静音に務めるチューニングがされているため、キーボード面や底面はそれなりに熱くなる。小型の扇風機を当てたいくらいだ。
このあたりは設定で変更できるようになっていればありがたいのだが、Windowsの電源モードを「最適なパフォーマンス」にする以外ないようだ。この場合は消費電力と熱の増加も許してしまうので、ファンの回転数だけ上げてほしいという要望には応えられない。
昔ながらのTPFanControlは動作するようだが、モダンスタンバイが有効の場合にはスリープ時もファンが回り続けてしまうことがあるようでうまくいかない。
高負荷時にファンの音が目立つことはないが、もう少し積極的に冷却を行ってほしいところではある。
最後に
細かい部分は気になってしまうが、X1 Extremeに比べれば速くて軽くて実用的なので総合的には満足している。とてもパワフルなので、eGPU BOXとの組み合わせも試してみたいところ。
高解像度でやや縦長のディスプレイを備えたモバイルノートは貴重で、その中でも特に複雑な条件に応えられる機種はこのThinkPad T14 Gen3以外ほとんど存在しないだろう。